淡水魚

割烹旅館だるまや本店
遠藤善道さん

漁師の血筋 ⎯自給自足の料理人⎯

 木崎湖は、夏だったらうなぎ、うなぎは、ビール瓶くらい太いのも捕れるよ。基本的には「刺し網」で捕るんだよ。刺し網っていうのは夕方網を置いておいて、そこに魚が頭を突っ込むのを待って次の朝、見に行くんだ。網の大きさにもよるけれど、ワカサギも捕れればウグイも捕れるし木崎マスも捕れる。  木崎マスは、夏場は水温の低い深いところへ行っちゃうから、そうすると捕れにくくなるし、解禁になってすぐの四、五月ころが一番捕れるね。フナやブラックバスも。ブラックバスも実はおいしい。スズキの仲間だからね。(禁漁期 9月15日〜3月31日)

 木崎湖漁協ではワカサギの卵とかフナ、全国でも木崎湖にしかいない「木崎マス」の稚魚を放流してる。木崎マスは一時期、自然ふ化に任せていたら絶えそうになってしまったんだよ。それこそ「幻の木崎マス」になってしまう。

 それで本格的に漁協が放流を始めた。県の特別採捕許可をもらってさ、9月ころ、中綱湖と木崎湖の間にある「中部農具川」で遡上するオス、メスの木崎マスを捕まえて、採卵した卵を成魚にして湖に放すんだ。ある程度大きくしないとブラックバスに食べられちゃうから、10センチから12センチくらいに育ててね。育てるときは病気が一番心配。ふ化してから稚魚までは本当に弱い。カビがくっついたりすると大変だし、死んでしまった卵や魚から何か感染することもあるから、絶えず見守っていないといけない。毎日の見回りも1人がずっとつきっきりで見ていないと微妙な変化がわからないから。

 でも、養殖場で育つ木崎マスもおいしいけど、湖水で捕れる天然物は一味違うよ。養殖だと25センチから30センチくらいで成熟してしまうんだけど、天然物はワカサギとかエビとかを食べて50センチくらいの大きさになる。天然物を捕っているのは今、ほとんどうちぐらいしかないんだけど、ここでは宴会とかお昼ご飯で出してるよ。うま煮とか塩焼きだとか。旬はやっぱり4、5月だな。脂がのっていて刺身で食べてもおいしい。

 そりゃあ、外来魚のブラックバスがいないほうがいいけれど、今となってはそういうものもうまく利用しなきゃいけない。ブラックバスもおいしく食べてもらえるようにしていかなくてはね。ブラックバスもフライとかでおいしく食べられるんだよ。 今の時期(3月)だとワカサギとかウグイとかブラックバスが食べられる。うなぎの網をかけておけば、なまずもかかるしブラックバスもかかる。ブラックバスをお刺身にしたりてんぷらにしたり、夏の時期はなまずをあらいにしたりてんぷらにしたりね。

 山でも猟をするよ、シカとかイノシシを捕る。流行のジビエだよね。それもまたぎ汁だとかにしてお客さんに出してるよ。 山菜やきのこも山に行って自分で採ってくるし、野菜も自分でつくって提供しているよ。スーパーに行って買ってきたほうが安いと思うんだけどさ、無農薬だったり、有機栽培だったり、自分でつくったものは安心できる。自然のものを提供できるうれしさや誇りがあるよ。苦労しても、お客さんの「おいしい」っていう言葉で報われるね。  親父も料理人で漁師だったから、ちっちゃいころは親父の手伝いで船を漕がされてた。俺は4代目。明治40年ころが創業で、120年くらい続いてるかな。昔は専業漁師がいっぱいいたけどね。昭和40年くらいまでかな。魚が余分に捕れればよそに分けたりしていたな。東京の専門学校で料理を学んで、戻ってから、親父が年取ってきて湖水に出れなくなってきて30年くらい前に代替わりしたんだけど、それからはほぼ毎日朝夕漁に出る生活だよ。漁の技術は、一生勉強だね。どこに魚がいるかとか、ここは木の根っこに引っかかるとか、毎年毎年変わっていくから。

 木崎湖の魚がおいしいのは、やっぱり山から流れてくる水がきれいだからね。それに、大町は四季がはっきりしていることがいいんじゃないかな。木崎マスにしても昔からずっといるんだけど、ここにしかいない魚。おいしい魚だから大事に守っていきたいね。

だるまやの奥さん

 自給自足で生きてるから、食文化って言うからには自給自足でしょ。だるまやの味は、なんども食べてみないとわかるわけないですよ。だるまや本店のうなぎを食べずして、何を語れるか、まずは食べてみてください。

 漁は危険をともなうものだから、帰ってくる船のモーターの音を聴いてやっと安心するよ。ワカサギも一匹一匹網からはずすのが大変なんです。でもお客様が喜んでくれればいい。生き抜けていくこと、正直商売でやってるんじゃないですよ。アルプスの水で育ったトマトもきゅうりも、たまねぎもじゃがいもも新鮮だからおいしいんです。全部自給自足です。

 本当にお客様のおかげだね。具合がわるくなった時には、だるまやに来て、うなぎを食べるってお客様もいらっしゃいます。泊まりはゆっくり過ごして頂きたいから一日一組15名様くらいまでですね。

北ヤマト園
大町市平11639
0261-22-0625